ピルを飲むと血栓症リスクが高まる?要注意な症状・なりやすい人の特徴と予防について

あなたは、ピルと血栓症の関係が気になっていませんか?ピルは避妊や月経困難症の治療に広く用いられていますが、服用による血栓症のリスクが指摘されています。
この記事では、ピル服用者に知っておいてほしい血栓症のリスクや初期症状、予防法について解説します。
ピルによる血栓症が心配な方、服用中の方は、ぜひ参考にしてください。正しい知識を身につけ、安心してピルを使用しましょう。
ピルと血栓症の関係
ピルと血栓症は一見関係なさそうに思えますが、実は密接に関わっています。ここでは、その関係性について詳しく見ていきましょう。
ピルが血栓症リスクを高める仕組み
ピルに含まれる卵胞ホルモンには、血液を固まりやすくする作用があります。ホルモンバランスの乱れが引き金となって、血栓症のリスクが高まるのです。
血栓症(静脈血栓塞栓症)とは
血栓症とは、血管内で血液が固まり、血流を妨げる病気の総称です。なかでも、静脈で発生するタイプを特に静脈血栓塞栓症(VTE)と呼びます。
VTEは、以下のような状況で発症しやすいことが知られています。
ピルの服用は、血液を固めやすくすることでVTEのリスク要因となります。ほかにも、長時間の同じ姿勢、肥満、喫煙なども危険因子に数えられます。
ピル服用による血栓症発症の確率
一般的に、VTEを発症する確率は1万人に1~5人程度とされています。しかし、ピルを服用することでこの数値は約3倍に上がります。
日本産婦人科学会の調査によると、ピル服用者のVTE発症率は1万人に3~9人に及ぶそうです。
ただし、発症率はあくまで確率の問題です。必ずしも服用者全員に当てはまるわけではないので、過度に心配する必要はありません。
血栓症になりやすい人の特徴
血栓症のリスクは人によって異なります。ここでは、血栓症になりやすい人の特徴について詳しく解説していきましょう。
年齢や喫煙習慣による影響
まず、年齢と喫煙習慣が血栓症のリスクに大きく関わっています。35歳以上の女性は、若い世代と比べて血栓症になるリスクが高くなります。
また、喫煙習慣も血栓症のリスクを高める要因の一つです。特に1日15本以上の喫煙者は要注意です。喫煙は血管を収縮させ、血液の流れを悪くするため、血栓ができやすくなるのです。
低用量ピルを服用中の方は、禁煙するか、少なくとも1日の喫煙本数を減らすことをおすすめします。
基礎疾患がある場合のリスク
次に、基礎疾患がある場合も血栓症のリスクが高まります。具体的には、高血圧、心疾患、腎疾患、肝機能障害などの疾患がある方は注意が必要です。
これらの疾患は、血液の流れに影響を与えたり、血液を固まりやすくしたりすることで、血栓症のリスクを高めてしまうのです。
低用量ピルの服用を検討している方は、事前に医師に相談し、基礎疾患の有無を確認しておくことが大切です。
肥満とホルモンバランスの関係
肥満も血栓症のリスクを高める要因の一つです。肥満の方は、エストロゲンなどの女性ホルモンが過剰に分泌される傾向にあります。
エストロゲンは血液を固まりやすくする作用があるため、肥満によるホルモンバランスの乱れが血栓症のリスクを高めてしまうのです。
低用量ピルを服用中の方は、適正体重の維持を心がけ、バランスの良い食事と適度な運動を取り入れることが大切です。
その他の危険因子
最後に、その他の血栓症の危険因子について見ていきましょう。
前兆を伴う偏頭痛と診断されている方は、血栓症のリスクが高いと言われています。前兆のある偏頭痛は、脳血管の異常収縮と関連があるため、血栓ができやすい状態になってしまうのです。
また、家族に血栓症の発症歴がある方も要注意です。血栓症には遺伝的な要因も関わっているため、家族に血栓症の方がいる場合は、自身のリスクも高くなります。
低用量ピルの服用を検討している方は、事前に医師に相談し、血栓症のリスク評価を受けることをおすすめします。
ピル服用中に注意すべき血栓症の症状
ここでは、ピル服用中に警戒すべき血栓症の様々な症状について解説します。
下肢の痛み・浮腫みなどの初期症状
血栓症の初期段階では、足の痛みや痺れ、浮腫みなどの症状が現れることがあります。特に、ふくらはぎのだるさや片側の下肢の腫れは要注意です。
これらの症状を感じたら、速やかに医療機関を受診しましょう。早期発見・早期治療が血栓症の重症化を防ぐカギとなります。
胸痛や呼吸困難の危険サイン
血栓が肺動脈に詰まる肺塞栓症では、胸の痛みや圧迫感、呼吸困難などの症状が急激に現れます。安静時にも息切れや動悸を感じる場合は要注意です。
これらの症状は生命に関わる危険なサインであり、一刻も早い医療機関への受診が不可欠です。ためらわずに救急要請を行いましょう。
頭痛や視力低下などの神経症状
まれに、血栓が脳血管に生じ、脳梗塞を引き起こすことがあります。片側の手足の麻痺や構音障害、突然の激しい頭痛、視力の急激な低下などが主な症状です。
脳梗塞の疑いがある場合は、一刻も早く脳神経外科や神経内科を受診しましょう。初期対応が予後を大きく左右します。
腹痛など他の部位の症状
稀ではありますが、血栓症は腸間膜静脈や肝静脈などの腹部の血管にも生じる可能性があります。激しい腹痛や血便、嘔吐などの消化器症状が見られる場合は注意が必要です。
原因不明の急激な腹部症状が現れたら、迷わず救急外来を受診しましょう。血栓症の可能性を医師に伝えることが肝要です。
ピルを服用中の方は、血栓症のリスクを十分に理解し、初期症状を見逃さないことが重要です。不安な症状があれば、ためらわずに医療機関に相談しましょう。
ピル服用者の血栓症予防法
日常生活での予防ポイント
ピル服用者の方は、日頃から血栓症の予防を心がけることが大切です。
まず、こまめな水分補給を心がけましょう。1日に1.2~2リットルの水分を摂取するのが理想的です。血液の流れをスムーズにするために欠かせないポイントです。
また、ストレスや疲労も血栓症のリスクを高める要因の一つ。十分な睡眠と適度な運動を心がけ、心身のバランスを保つよう努めましょう。
さらに、喫煙は血栓症のリスクを大幅に高めるため、ピル服用中は禁煙が強く推奨されます。
加えて、肥満も血栓症のリスク因子です。バランスの取れた食事と適度な運動で、健康的な体重の維持を目指しましょう。
飛行機などでの長時間の座位時の対策
長時間の座位は、血液の停滞を招き血栓症のリスクを高めます。特にピル服用者の方は要注意です。
飛行機などでの移動時は、1~2時間おきに立ち上がってストレッチをすることをおすすめします。機内で簡単にできる足の屈伸運動も効果的です。
着圧ストッキングの着用も、血栓症予防に有効です。適度な圧力で血液の流れを促進してくれます。
また、窓側の席を選び、こまめに水分補給することも大切。機内の乾燥した空気は血液の粘度を高める恐れがあるため、小まめな水分補給を心がけましょう。
ピル服用中の定期検診の重要性
ピルを安全に服用するためには、定期的な検診が欠かせません。
服用開始から3ヵ月後の検診では、ピルの副作用の有無や体調の変化を確認します。その後は6ヵ月~1年ごとの検診が推奨されています。
検診では、血圧測定や体重測定、血液検査などを行います。異常が見られた場合は、ピルの種類や用量の変更、服用中止など、医師の指示に従うことが重要です。
また、ピル服用中に血栓症の初期症状(足の痛み・むくみ、胸痛、激しい頭痛など)が現れた場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
ピルによる血栓症が疑われる時の対処法
ピルの服用は適切な対処が欠かせません。ここでは、ピルによる血栓症が疑われる際の行動指針をお伝えします。
すぐに医療機関を受診する必要性
ピル服用中に足の痛みや痺れ、胸痛、激しい頭痛、腹痛などの血栓症の初期症状が現れたら、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
血栓症は早期発見・早期治療が極めて重要です。症状を見逃さず、迅速な対応を心がけてください。
医療機関では、血液検査や画像検査などを行い、血栓症の有無を判断します。確定診断には、専門的な検査が不可欠なのです。
ピルの服用中止と医師への相談
血栓症の疑いがある場合、ピルの服用は直ちに中止してください。そして、処方医に相談し、指示を仰ぎましょう。
医師は、症状や検査結果を総合的に判断し、ピルの継続可否を判定します。服用中止が必要と判断された場合は、他の避妊法への切り替えを提案してくれるはずです。
ピルによる血栓症のリスクは個人差が大きいため、医師との綿密な相談が欠かせません。自己判断は避け、必ず専門家のアドバイスを求めてください。
検査と治療の流れ
血栓症が強く疑われる場合、静脈血栓塞栓症(VTE)の確定診断に向けた検査が行われます。超音波検査や造影CT検査などで、血管内の血栓を視覚的に捉えるのです。
血栓症と診断されれば、抗凝固療法を中心とした治療が速やかに開始されます。ヘパリンやワルファリンなどの抗凝固薬を用いて、血栓の拡大を防ぎ、溶解を促進するのが一般的です。
治療と平行して、血栓症の再発予防も重要な課題となります。生活習慣の改善や、弾性ストッキングの着用など、医師の指導に従って再発リスクを軽減していきましょう。
ピルと血栓症の関係のまとめ
ピルの服用と血栓症は密接に関わっています。ピルに含まれるホルモンが血液を固まりやすくしたり、血管をつまりやすくしたりすることが原因です。
この関係を正確に理解し、適切に使用することが重要です。
ピルの利点を最大限に活かすためにも、正しい知識をつけ、適切に健康管理して使用しましょう。